Sunday, December 23, 2007

オニババ化する女たち


女性の社会参加があたり前になった昨今、月経や性、出産という女性のからだにまつわる経験については、「女性の社会進出にとってマイナスなもの」として、人為的にコントロールしたり、過剰な医療介入を許したりする風潮がある。
そうした流れは、たとえば乳児死亡率の低下や、不妊治療の進歩など、女性にとって歓迎すべき変化をもたらした。けれども一方で、本来女性のからだが持っていた生物としてのエネルギーは、過小評価され、スポイルされ、今ではもう絶滅寸前の危機にあるのではとさえ感じる。

近代医療が存在しない時代でも、女性は性を謳歌し、出産し、育児を行ってきた。そこには、世代から世代へ受け継がれてきた、性と生殖に関する知識があり、それは今よりもずっと豊かなものだったはずだ。

女性自身が、医療から離れた見地に立ち返り、女性性が本来持っている生物的なエネルギーを再認識し、その素晴らしさを評価することが、今の私たちには必要なのだと強く感じた。


「医療の知識は、ほんの数年、長くて数十年、近代医療の歴史すべてを合わせても、たかだか百年程度の人間の知識なのです。このような短い時間しか経ていない「知識」は、治療の現場で、専門職の人々にとっては役にたつことかもしれませんが、人々がより豊かに性を営もうとするときには、あまり役に立てないのではないでしょうか。「知識」として覚えた医療や健康の情報は、若い人たちの心には届かず、なんだかどこかを素通りし、上滑りしているような感じを覚えるのです。

「理想ばかり追いかけても、人生は思い通りになりません。人生なんでも思い通りになるのだとしたら、「死」や「次の世代への交替」を受け入れられません。特に、結婚とか、子供を産むとか、誰かと一緒に住むというのは、全部「思い通りにならないこと」を学ぶことなのです。 」

「健康とか美容に関しては、消費社会によって歪められた情報でない限りにおいては、重要だと思います。自分のからだに興味を持つというのは、悪いことではありません。ただ、氾濫している情報のほとんどが、どのように商品化するのか、ビジネスにするか、ということをベースにしているので、本当に女性が自分にとって必要な情報を選び抜くということはなかなか困難になっていると思います。」




オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す (光文社新書)