Thursday, November 02, 2006

Born Fi' Dead


連休中に読もうと思って買ったのですが、あまりに面白いので読み進めてしまい、連休前に終わってしまいそうです。

『ボーン・フィ・デッド』 ジャマイカの裏社会を旅して


西インド大学で教鞭をとっていた歴史学者、ローリー・ガンストが、政権争いで内戦状態だった70年代から、IMFへの借金とアメリカの侵食で極度の貧困状態に晒された80年代のジャマイカの様子を描いたドキュメンタリーです。政治家や警察官、ギャングやレゲエ・アーティストなど、当時実在した人物が実名で表記されている為、90年代後半に出版された際には大変な物議を醸しだしたそうです。
BobMarleyの活躍の背景として、当時の二大政党、PNPとJLPの抗争の存在が語られることは、レゲエ・ファンの間ではお約束みたいになっているけれど、さらにその先の悲劇…政治家とギャングの癒着、政治抗争の犠牲となったポシー(ギャング)達、混乱の中絶望的な生活を強いられる一般の人々の様子…といった負のスパイラルについては、誰も教えてくれなかったし、誰も気に留めなかった気がします。  80年代にジャマイカで流行った数々のレゲエの楽曲は、今でも日本でも大人気だけれど、そのリリックに出てくる「ガンマン」「ガンショット」「ポリス」「バビロン」「ゲットー」、そして「デッド」といった言葉は、当時の現実以外なにものでもなかった、ということを改めて思い知らされました。

ここ数年、日本でも市民権を得てきた(?)レゲエシーンですが、日本人のサウンドシステムやDJが語っているアーティスト名が、実はジャマイカでは悪名高いギャングの名前だったり、口に出すのも憚れるような犯罪者の名前だったり…

レゲエという音楽が好きで、それをイザ自分の表現方法として選んだ時に、その音楽が持つ歴史的背景を全て背負い込むのは、ローカル出身者でない限り不可能だと思うけれども、スタイルだけを真似ることの危険さ、浅はかさを叩きつけられたようで、正直、大変な衝撃を受けてしまいました。。。

この本のタイトル、「Born Fi' Dead」ですが、「Fi」はパトワ語で、英語の「to」に値します。
Born to be dead=死ぬ為に生まれてきた。
衝撃的な言葉ですが、実はこのフレーズ、慣用句のような感覚で、レゲエ・シーンでは非常によく耳にします。ごく最近も…。


ちなみにこの本、原書に共感した日本人の方が著者に直接コンタクトをとり、今年になって自費出版によりようやく日本語版の発売を実現されたそうです。Nuff Respects!!